※この記事を読んでくださってる方はNPO法人 日本吃音協会の公式サイト『Fujimoto’s Story』から流入してきた方だと思います。
こんにちは。NPO法人日本吃音協会の理事長の藤本です。
- 私がこれまで経験してきたこと
- なぜ、この日本吃音協会を立ち上げたのか?
- この協会に関わってもらった人達にどのようになってほしいのか?というビジョン
を紹介していきます。
もし、
- あなたがあなた自身のこと
- あなたの子供が吃音に悩んでいる
のなら、日本吃音協会があなたやあなたのお子さんにとって居心地の良い温かい場所であると確信しています。
だから、最後まで読んでみてくださいね。
■ 自殺したいと思っていた
私は「NPO法人日本吃音協会」を立ち上げました。
「NPO法人の立ち上げ」
この言葉だけ聞くと「すごい」と感じる人もいるかもしれません。
でも、私にも吃音があり、吃音で悩んでいる多くの人と同じような経験をしてきました。
小学1年生の時には、友達から喋り方を真似されたことを覚えています。
音読では人が30秒で読めるところを、毎回5分くらいかけて読み、周りからいじられ、真似をされ、自殺したいとまで思ってたこともあります。
自己紹介も本当に苦手でした。
クラス替えでは「どんな友達ができるかな」というようなワクワク・楽しみ・期待という感情より、「自己紹介で上手く話せるかな。吃ったらどうしよう…」というネガティブなことで、頭の中でいっぱいでした。
中学生活の最後、高校入試の面接でも失敗しました。
面接でも、案の定、吃ってしまいました。その時に、面接官から「ちゃんと話せないのか??」と言われました。
あれから30年程経ちますが、今でも鮮明に思い出します。
そして、高校にも落ちてしまいました…。
■ 「吃音」は「幸せ」の邪魔にはならない
でも、現在は9歳、7歳、5歳の3人の子供がいます。
ちょっと照れくさいですが、幸せに暮らしています。
仕事も、22歳の時にお店を出しました。
それをきっかけに、その後も事業を増やしていき、現在は7つの事業をしています。
飲食店を5店舗。ホームページ制作会社。法人向けのデジタル支援の会社など、さまざまな事業を経営しています。
全ての事業はコロナ禍でも成長を続けていて、ありがたいことに業績は右肩上がりです。
他にも、個人投資家として、社会の役に立つ企業・事業に投資という形で応援・協力もしています。
■ 私の想い『人の役に立つもの、求められているものを創る』
私には、事業の立ち上げやこの日本吃音協会の立ち上げにも共通する想いがあります。
『人の役に立つもの、求められているものを創る』
この想いは、初めて飲食店を始めた22歳から変わっていません。
きっと、この想いは、私が17歳の時に1人で富山から「鞄1つ」と「吃音」だけをもって上京して働き始めた時に経験したことが活かされているのかもしれません。
東京で働き始めてみると、「これでいいのかな?」と自分の仕事に疑問を感じることが増えていきました。
誰かに指示をされて、言われた通りのことやるだけ。
改善できる点はたくさんあるのに、「そういう決まりだから」というルールや決まりによって、現状維持しかできないこと。
自分のしている仕事が誰の役に立っているのかわからないこと。
他にも、会社や上司に対してもストレスを感じることも多くありました。
効率が悪くても、現状に満足して、チャレンジ・変化をしようとしないこと。
自分がもっと効率の良い方法と試したいと感じても、理由なくその提案が取り下げられてしまうことにも、かなりストレスを感じていました。
仕事をしていた時の不満や、自分の吃音も相まって、すでにあるルールの上で頑張るよりも、自分で新しいルールにつくって、もっと生産的に、もっと吃音があっても自由に働けるように会社を始めました。
■ 日本吃音協会は吃音の役に立つ「全てをやる」
日本吃音協会では、吃音で困っている全ての子たちにとって「いいこと」をやっていきたいと考えています。
少し抽象的でフワッとしていますか?
でも、これが本音です。
吃音で困っている人に役立つ「全てのこと」をしたいと考えています。
例えば、
吃音の子の学習教室『SCW青空教室』。
この教室では、吃音をもつ小中学生に社会人の学習支援スタッフ(吃音当事者)が、『学校で先生に聞けなかったこと』を教えてくれたり、『将来の不安』に対する悩み相談を行っています。
就活支援から子育てまでのサポートを一貫して行う吃音当事者のためのオンラインサロン(Stutter Story’s)運営。
このオンラインサロンには吃音当事者やそのご家族が人生でぶち当たってしまう障がいを乗り越えるための支援体制を全て、注ぎ込みました。
吃音啓発サムネ、吃音啓発パンフレット、ポスターを用いた吃音の啓発活動。
他にも、
・『就職支援』のその先を見据えたキャリア支援事業
・吃音当事者の社会参加を促進するための、各種イベント運営
・親御さんの悩み相談会の運営
・いつでもどこでも『吃音のことが相談できる』メンター制度
といったものを整えています。
とりあえず「吃音当事者やそのご家族にとっていいもの全部作る」と決めています。
もし、わたしが子どもの頃に、SCWがあったら、心を塞ぐことはなかったかもしれません。
誰かに悩みも話したかったし、理解してほしかっただけです。…
子供の頃も、今のままではダメだと思ってました…でも、どうすればいいのかもわからなかったのです。
だから、この日本吃音協会を通じて、昔の自分の悩みを全て解決できるような活動をしていくと決めました。
■ 吃音当事者にむけて:吃音があることで自分の可能性を殺していないか?
あなたは「吃音」で自分の可能性を殺していませんか。
吃音があっても、「話すのが大好き」という人はたくさんいます。
でも、吃音がでて「友達に変に思われたらどうしよう」「周りの人に迷惑をかけないようにしよう」と考えてしまって、話すのをやめてしまっていませんか。
他にも、発表やプレゼンでも本来は「相手にしっかり伝わる」「魅力のある内容」が最も大事です。
でも、吃音のせいで「吃ったらどうしよう」という不安で頭がいっぱいになってしまっていませんか。
学校の発表でも答えはわかっているのに、すぐに言葉がでないから「わかりません」と答えたり、先生から「こんな問題もわからないのか」と思われて悔しい経験をしたことはありませんか。
異性に対しても、吃音によって消極的になってしまったこともあるはずです。
本当は好きな異性とたくさん話をしたい、デートをしたり、クリスマスを一緒に過ごしたいと思っていても、吃音によって「やっぱりやめておこう」と消極的な行動になっていませんか?
私が伝えたいのは、吃音があっても、好きなように仕事をすることもできます。結婚をして幸せな家庭をもつこともできる。
ということです。
吃音者は不幸だ。こんな風に思ってしまっているなら、それは違います。
吃音でも幸せに生きていくためには、物事の見え方、価値観を知る必要があります。
もし、あなたが現状に満足していないのであれば、それはあなたとって不利な価値観で生きているからでしかありません。
物事の見えや価値観が変われば、吃音があったとしても、今のわたしのように幸せに生きることができるし、その先の困ってる人を助けることもできます。
こんなことをいうと気を悪くする人がいるかもしれませんが、わたしと同じように、吃音者が幸せに生きるための価値観を教える人が増えれば、救われる人が増えていくと思っています。
吃音で幸せに生きるには、方程式があります。
「吃音+ⅹ=幸せA」
吃音をネガティブに考えて、落ちこんだり、不安になるのはわかります。
でも、吃音に「x(何か)」を足すと、吃音者”だから”幸せになることができます。
もし、あなたにとっての「x」がわからない。つまり、何をすればいいのかわからない。
と感じているなら、日本吃音協会があなたにとっての「x」を探す場となるでしょう。
あとは、あなたが勇気をもって実行するだけです。
実行できれば、きっとあなたが理想とする「幸せA」が見つかります。
■ 親御さんへ:学生時代の経験でその子の可能性を伸ばす
100人以上の吃音の人にアンケートをとってみると、意外なことがわかりました。
アンケートの回答には
・学生時代に吃音で悩まなかった
・思い出したくもない
全く違う正反対の回答があったのです。
この違いはなんでしょうか?
吃音に悩まなかった子はみな「周りの環境に理解があった」と話していたのです。
つまり、大人の私たちがつくる環境によって、子供の将来が変わるということです。
あなたは子供にどんな風に過ごしてほしいですか?
「そんなこと、思い出したくもない…」
「たくさんの経験ができて、楽しかったよ!」
どっちがいいですか?
親から始まり、親や先生が協力し合って周りの親、先生にも、何をすればいいのかを理解を広めることが必要です。
こうして、初めて子どもたちに吃音への理解が生まれると思いませんか。
もし、こんな吃音に理解ある環境で育ったら、どんな子供になるでしょう。
友達や先生、周りの人も、もし、子どもの吃りがひどくても、しっかり話を聞いてくれて、理解してくれる。そんな存在であれば安心できますよね。
吃っても安心できる場があったら、自信を失うことがなく挑戦し続ける楽しさをもち、成長していくことができます。
実は、私にも3人の子供がいます。
だから、親として吃音の子供がいるお父さん・お母さんの助けになりたいのです。
親御さんの気持ちは痛いほどわかります。
そして、当事者である吃音の子供の気持ちも痛いほどわかります。
親は子どもが不安なく成長し大人になってほしいと願うものです。
吃音のあるお子さんの親御さんは、より強い思いで、子どもに何かしてあげたいと思っているはずです。
もしかしたら、子供以上に不安に感じているかもしれません。
「自分の子どもがいじめられないか?」
「不安に過ごしていないか?」
「自信を無くしていないか?」
でも、吃音の事や吃音の子供がしてほしい事が理解しづらいと思います。
なぜなら、吃音になったことがないからです。
吃音に悩む子供の気持ちが本当の意味で深くわからないのです。
だから、良かれと声掛けや行動が、結果的に、子供と傷つけてしまっていることもあるかもしれません。
親としては「子供のために」。ただ、この想いだけなのに…。
私は、その悩みを解決していきたいのです。
もっと、あなたの助けになりたいのです。
もっと、頼って欲しいのです。
・企業にむけて:社会が見逃した優秀な人材を採用できる
吃音における社会の問題として
・吃音が原因で就活時に減点される、不利になる
・会社で働いていても吃音のため評価が下がる
これらが原因で自信を無くしてしまう子が多くいます。
なぜ、そうなってしまうのでしょうか、
大手企業は多様性が浸透している割合が高いので、吃音という言葉の意味など理解していることが多く、面接でも吃音とかけば面接官が配慮をして面接してくれます。
でも、これは一部の話です。
数では圧倒的に多数である中小企業では
(特に日本の場合は、中小企業の数は全企業の99%を占めていますよね)
・面接でも配慮されない。
・知らないうちに減点されてる。
・仕事の評価が吃音のせいで落ちる。
こんなことは日常茶飯事です。
この問題は吃音の当事者や企業にとっても問題だと感じています。
吃音の問題は、100人に1人いることを考えると企業にとっても無視できない問題だと思いませんか。
もし、1000人の従業員がいる会社なら10人の吃音者がいる確率になります。
でも、現実は、吃音があると能力を発揮できず、生産性が落ちている可能性が非常に大きいです。
会社は「吃音症」や「吃音者」を理解できていません。
でも、それはある意味、仕方ありません。
なぜなら、「吃音」について誰も教えてこなかったからです。
でも、「吃音症」や「吃音者」を理解することができれば、会社も本人もwin-winになります。
近い将来、日本吃音協会では、吃音を理解してくれる会社で吃音者が気持ちよく働けるような支援体制をを構築していきたいと考えています。
SCWとの協働で、あなたの会社にも大きなプラスをもたらすことは間違いありません。
■ 終わりに
私は、吃音に関わるみんなが理想とする社会・世の中を、必ずこの吃音の人生をかけて成し遂げたいと思っています。
でも、私一人の力ではとてもじゃないけど難しいことです。
私が子ども時代に感じた苦しみの環境が、今もなお変わっていないというのは本当に驚きました。
それを知ったわたしは胸が張り裂けそうな想いです。
既存の吃音の支援も限定的で、本当の意味での吃音者がサポートされていないという事実があります。
吃音に理解してくれる社会を待つのではなく、私たちが社会を変えて、さらに吃音者も主体的に変わっていくことが必要になっています。
現在、吃音は時代に取り残された障がいになっています。
今は、凝り固まった考えではなく、多様性が必要な時代です。
考えにも柔軟さを持たせ、相手のことを理解し、一緒に仲間を引き上げていって吃音でも自分らしくありのままで入れる人を1人でも増やしていきましょう。
「吃音でも苦しくないよね」っていえる時代が必ず訪れます。
これから生まれてくる子どもたちが困らない環境を、私たち大人がつくっておいてあげましょう。
この記事へのコメントはありません。